コラム
記事作成日2025.07.10
築32年の木造戸建て住宅を、性能向上とデザイン性の両立を図りながらフルリノベーション。
この「長期優良住宅化リノベ」シリーズでは、単なる住宅の再生ではなく、"暮らしを再編集する"プロジェクトとして、施工現場の様子や考え方をご紹介しています。
第4回の今回は、内装の仕上げや造作家具、水まわり、土間空間など「暮らしの質をかたちにする工程」を中心に取り上げます。
目次
1."壊してつくる"のではなく、"引き継いで整える"という考え方
2.素材の魅力を活かした内装の仕上げ
3.水まわりの美しさと機能性
4.暮らしの余白を育てる土間リビングとパントリー
5.外壁の選定とデザインの意図
6.まとめと次回予告
1. "壊してつくる"のではなく、"引き継いで整える"という考え方
このリノベーションでは、すべてを新しく作り直すのではなく、
「引き継ぐ部分」と「刷新する部分」を丁寧に見極めながら計画しました。
たとえば、構造材として使われてきた柱や梁は可能な限り既存を残す方針を取りました。
過去の住まいの記憶を受け継ぎながら、新たな価値を加えていく――
それが、このプロジェクトの大きなテーマのひとつです。
見た目だけでなく、柱の状態や構造の安全性も現場で入念にチェックしながら、**"残すべきものを選び、活かす"**という姿勢を大切にしています。
2. 素材の魅力を活かした内装の仕上げ
壁は塗装とクロスで、質感を切り替える
室内の壁は、全面を同じ仕上げにせず、空間の使い方や光の入り方を見ながら
1Fは「塗装仕上げ」、2Fは「クロス仕上げ」と適所で使い分けました。
▲1Fリビング壁は塗装仕上げ
▲2Fはクロス仕上げ
塗装部分は、あえて少しマットな仕上がりを選ぶことで、落ち着いた空気感に。
クロス部分は、主張を抑えた上品なものを選定し、素材の表情で空間に変化をつけています。
天井にラワン合板を使用
2階洋室の天井と土間の天井にはラワン合板を用いています。
表情が穏やかで、経年変化も美しく、木のぬくもりが空間全体に広がる仕上げ材です。
▲土間天井
▲2F洋室の天井
木材をただ"使う"のではなく、光や視線、家具との関係性を意識した配置とすることで、素材の魅力を最大限に引き出しています。
床材はウォールナット無垢材を贅沢に
リビングの床には、ウォールナットの無垢フローリングを採用しました。
深いブラウンの色味と、豊かな木目が特徴で、インテリア全体を上品に引き締めてくれます。
無垢材ならではの踏み心地の良さや湿度調整効果もあり、素材そのものが「暮らしの質」を支える存在となっています。
3. 水まわりの美しさと機能性
トイレは「オンザウォール」で機能と質感を両立
トイレの壁仕上げには、自然素材の塗り壁材「オンザウォール」を使用しました。
この素材は、調湿性・消臭性に優れており、日々の生活の中での快適性を高めてくれます。
また、左官仕上げならではの柔らかい風合いが、狭い空間を圧迫感のない、やさしい印象に仕上げています。
キッチン・洗面台は造作で。モールテックス仕上げの魅力
キッチンと洗面台は、すべて造作家具で設計。
カウンター天板には、左官仕上げ材「モールテックス」を採用しました。▲オリジナル造作キッチン
▲オリジナル造作洗面化粧台
耐水性・耐久性がありながらも、表面はしっとりとした質感で、手仕事のあたたかさが残ります。
モールテックスは「コンクリートのようでコンクリートではない」不思議な素材感が特徴で、
無機質すぎず、生活に溶け込む優しい存在感が魅力です。
造作ならではのサイズ調整やディテールへのこだわりにより、使いやすさと美しさを両立した水まわりが完成しました。
4. 暮らしの余白を育てる土間リビングとパントリー
内と外をつなぐ「土間」という空間
玄関とリビングの間には、土間空間を取り入れています。
床材と仕上げを切り替えることで、家の中でありながら、外とつながるような開放感を演出。
この土間には、造作のベンチも設置。
ちょっと腰かけたり、荷物を置いたり、来客と談笑したりと、
使い方に縛られない「暮らしの余白」として機能します。
どこか懐かしい土間文化を、現代の住宅に自然に取り入れた設計です。
家事の味方、パントリーの増設
キッチン脇には、新たにパントリーを設けました。
食品や日用品のストック、ゴミ箱置き場、調理家電の収納など、
生活動線に無理のない位置に、しっかりとした収納スペースを確保。
冷蔵庫もパントリー内に設置することで、"隠す美しさ"も実現しています。
5. 外壁の選定とデザインの意図
外壁材には、カントリーベース社が開発した高機能塗り壁材「soi(ソーイ)」を採用しました。
このsoiは、手仕事による塗り壁の風合いと、高い耐久性・防汚性を両立した素材で、
**"時間とともに育つ外壁"**として、リノベ住宅との相性も抜群です。
今回の現場では、自然なグレー系の色味を選定し、木部とのコントラストを意識した設計に。
光の当たり方や天候によっても表情を変えるsoiは、住まいの外観に奥行きをもたらしてくれます。
また、メンテナンス性にも優れており、長く美しさを保てる点でも評価が高い素材です。
6. まとめと次回予告
今回の現場では、「素材」「仕上げ」「暮らしの導線」に焦点を当ててご紹介しました。
新築では味わえない、時間の重なりや風合いを活かしながら、
今の暮らしに必要な快適性や機能性をしっかり備えた住宅。
それが、この長期優良住宅化リノベの魅力です。
▶ 次回「vol.5」は外構編!
次回の現場リポートでは、外構工事の様子や設計の考え方、使っている素材や庭づくりの工夫について詳しくご紹介します。
建物と一体で考える外まわりのデザインにご興味のある方、ぜひお楽しみに!
長期優良住宅化リノベ現場リポート vol.1 はこちら
長期優良住宅化リノベ現場リポート vol.2 はこちら
長期優良住宅化リノベ現場リポート vol.3 はこちら